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対談記事 アース製薬 × 田上大喜 人と蚊は、共生できるのか?

対談記事 アース製薬 × 田上大喜
人と蚊は、共生できるのか?

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研究の楽しさと苦しさ

田上さんに伺いたいのですが、研究をやっていて苦しいことはないのでしょうか。

田上さん毎日欠かさず蚊の世話をするのは大変でした。今も30パターンぐらい遺伝子組み換えをしたショウジョウバエを使って実験していますが、その世話をするのが一苦労です。ショウジョウバエは卵から羽化後、だいたい12時間ぐらいで交尾します。だから1日2回、卵を採取しなければなりません。実験を始めると3週間ぐらいはずっと朝と夜、土日も含めて毎日ラボに行って卵を採取していて、この採取作業がちょっと大変です。

ノーベル賞を取られた山中伸弥教授も、アメリカで研究していた頃は毎日ネズミの世話ばかりで大変だったと話されていました。

田上さんネズミの世話は、ショウジョウバエの何倍も大変だと思います。だいたい生物の実験で使われるのは、ネズミとショウジョウバエ、そして線虫が多いですね。手間でいえば、おそらく線虫とショウジョウバエが最も簡単で、実際に蚊と比べればショウジョウバエの世話は圧倒的に楽です。

三木確かに蚊の世話は大変ですが、ショウジョウバエは違うのでしょうか。

田上さんショウジョウバエは幼虫も成虫も同じ餌を食べてくれるので、試験管に入れて放ったらかしでいい。ところが蚊の場合は、わざわざ血をあげなければなりません。遺伝子についてもショウジョウバエは研究が進んでいるので、遺伝子操作の方法なども確立されているのです。研究は大変ですが、研究員としてお仕事をされていて、お二人はストレスを感じられたりしないのでしょうか。

私の場合、実験した結果が思ったように行かなかったときにストレスを感じますね。

田上さんそんなストレスは、どうやって解消されるのですか。

しばらく実験を中断してみるとか、違うことを考えてみるとか。

三木私は時間的な制約をプレッシャーに感じることがあります。自分としては、もう少し突き詰めたいテーマなのに時間の都合上、途中で切り上げなければならないときなどはストレスを感じますね。

東京2020に向けた期待、若者の未来に寄せて

──これからの日本を支えてくれるのは、田上さんのような若者です。人生の先輩として研究員のお二人は、どのような若者を期待しますか。

田上さんを見ていると、その意欲と行動力に感心します。ぜひ、田上さんに続くような若者、自分の道を自分で考えて切り開いていくような人があとに続くことを期待したいです。

三木研究所の中にいると、外の世界を知る機会が減ってしまいます。それで思うのが、常に外に向かっていける姿勢、チャレンジする精神の大切さです。その意味でも田上さんは、大学から日本を飛び出してアメリカで活躍されている。逆にオリンピックやパラリンピックには海外からたくさんの選手が集まってきます。外の世界にどんどんチャレンジする若者が出てくると、私たちも刺激になりますね。

田上さんは色々な研究で活躍されていますが、ご自分についてどう感じていますか。

田上さん同じラボにいる大学院生たちと比べれば、僕の知識など全く勝負にならないと感じています。だから今はひたすら勉強するだけです。

三木どうしてアメリカの大学へ進んだのですか。

田上さん蚊の研究を始めて、成果発表の際に海外の方とお話する機会があったり、テレビ局のディレクターの方がアメリカの教授に会わせてくれたりしたのです。それで高1ぐらいから大学はアメリカに行きたいと考えるようになりました。

──東京2020、そしてそれ以降の社会に対するアース製薬としてのこれからの関わり方については、どのように考えていますか。

今後は虫を殺すのではなく、虫から人を守ることへのシフトがさらに進むと思います。まだアイデアレベルですが、家の周りに1個置いておくだけで、蚊が来なくなるような製品を開発できないかと夢想しています。世の中から蚊を根絶するのは不可能で、仮に強烈な殺虫剤ができたとしても、それを森にまいたりしたら、生態系がめちゃくちゃになってしまうでしょう。だから、基本的な考え方としては、住環境や人のまわりに蚊を寄せ付けない方向に持っていったほうがいいと思います。

三木私はとりあえずオリンピックやパラリンピックに関して、日本は安全だというイメージを持ってもらいたいですね。その意味では感染症対策などで私たちが何かサポートできればと考えています。田上さんは、どうお考えですか?

田上さんやはり研究者としての人生を歩んでいき、研究によって人を助けられたらいいなと思っています。白衣姿で実験しているところなどに憧れるし、自分もそんな研究者になりたいと思います。

アース製薬、その技術は研究が支えている

──田上さんがこれまでアース製薬に対して持っていたイメージがどのようなものだったのか、そのイメージが今日の見学などを通じてどのように変わったのかをお聞かせください。

田上さんアース製薬さんは、技術力が進んでいると以前から感じていました。例えば「ごきぶりホイホイ」のような商品は、海外では他のメーカー製のものも売られています。一度使ってみたことがあるのですが、組み立てにくく粘着力も弱かったです。しかも箱の真ん中に玉ねぎをおいてエサに使うような仕掛けです。一度ゴキブリが入ったら逃げられない仕組みなども含めて、アース製薬さんの商品の背景には、研究者の方々の日々の研究努力が生かされていると実感しました。

ほめていただいて恐縮です。研究において最も重視しているのが、虫の観察です。「ごきぶりホイホイ」の足の油分を吸い取って逃げにくくする仕組み(足ふきマット)にしても、ゴキブリの動きを何度も観察している中で見つけました。難しいことをやっているわけではありませんが、地道に粘り強くやっていることにかけては自信があります。

三木今後のアース製薬に何か期待する商品があれば教えてください。

田上さん東さんが仰っていた、一つ置いたら蚊が来なくなったり、ゴキブリも来なくなったりするようなものができればすごいでしょうね。もしかすると蚊の遺伝子を操作すれば、同じような効果が得られる可能性はありますが、遺伝子操作の弊害もあるかもしれません。それよりは、蚊が寄ってこない何かを発明するほうが理想的だと思います。

──最後にお聞きします。皆さんにとって蚊とはどんな存在ですか。

田上さん蚊のおかげで僕の世界は一気に広がりました。今日、こうしてアース製薬の方とお会いできたのも蚊のおかげです。蚊には非常に感謝しています。

私にとっては、貴重なビジネスパートナーです。蚊に対する興味はつきませんし、何より飯のタネでもあります。

三木私はライバルということにしておきます。いつか蚊が寄ってこない何かをつくれたらいいなと思いつつ、今の段階では蚊のほうが一枚も二枚も上手なので、よほど頑張らないと勝てないですね。

田上さんとアース製薬の研究員の対談は非常に熱のこもったものとなりました。蚊の根絶を目指すのではなく、人との関わりを変えて行ければいい、という思いは同じもの。アプローチは違っても、東京2020の先にあるより良い未来を創りだすために、お互いが最善を尽くすことを誓い合うのでした。

PROFILE
田上大喜さんMichael Dames for Columbia University’s Zuckerman Institute
田上大喜さん(たがみだいき)

1999年アメリカ・シカゴ生まれ
アメリカ、オーストラリア、シンガポールを経て中学より日本で過ごす
2016年「第11回科学の芽」賞受賞
2018年よりアメリカ・コロンビア大学・ザッカーマン研究所在籍 

東主任研究員
東主任研究員

アース製薬株式会社 研究開発本部研究部 所属(2007年入社)
蚊取り製剤、蚊捕獲機を含む虫ケア用品の商品開発を担当

三木研究員
三木研究員

アース製薬株式会社 研究開発本部研究部 所属(2015年入社)
虫よけ製剤を含む虫ケア用品の商品開発を担当

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